ドライアイ

さまざまな要因によって「涙の量の減少」「涙の質の低下」が起こり、目の表面を潤すのに十分な涙が行きわたらなくなり、目の不快感や見にくさを生じる病気です。
涙はわずか1000分の7mmという薄い膜ですが、「油層」「水層」「ムチン層」による3層構造になっていて、傷つきやすい目を外界のバイ菌や異物から守ったり、角膜へ酸素や栄養分を届けたりと、さまざまな役目を担っています。
また、涙の持っている抗菌成分リゾチームは、細菌の細胞壁を分解する作用があります。涙が足りないと、役割や機能も低下するので、目は乾いて傷つきやすい状態に陥りやすくなります。

涙の主要な役割

涙の三層構造

油層

目の表面に油膜をつくり、涙の蒸発を防ぐ。

水層

涙の大部分(98%)を占める層。
目の表面を潤すだけでなく、角膜へ酸素や栄養分を補給する。

ムチン層

涙が目の表面から流れ落ちないようにする“接着剤”のような役割。

原因と症状

ドライアイは、年々増加傾向にあり、その背景にはコンタクトレンズの長時間の装用、パソコンやスマートフォンの長時間の使用、エアコンによる乾燥、ストレスなどが挙げられます。 ドライアイは、現代のライフスタイルと非常に密接な病気と言えます。 また、年齢に伴い涙の分泌量は減少し、50代の方は20代の方と比較すると、約4割も減少するとされています。加齢に伴い、目の乾きを訴える方も多くいます。 視力が良くても「ものがかすんで見える」など、見え方に影響が出る場合もあります。それは様々な要因によって、涙が不安定になるために起こる現象です。

涙が目の表面に均等に行きわたらなくなると 涙の層がでこぼこして、ものが見えにくくなります。

ドライアイの主な症状

乾燥した状態が長引くと、敏感で傷つきやすい角膜が露出し、角膜上皮が剥がれ落ち傷が発生します。そして傷から細菌が入り込み目全体が感染したり、傷が深くなって視力が低下することもあります。 また、目の奥の視神経を刺激し、頭痛、肩こり、イライラといった二次症状につながることもあるので、目の異物感や疲れを感じたら、早めに眼科を受診することをお勧めします。

治療

点眼治療

ドライアイの基本的な治療は点眼薬治療になります。 症状が軽い場合は、潤いを持たせる点眼液で緩和させることができます。 人工涙液、ヒアルロン酸製剤、水分の分泌を促進し、ムチンの分泌や発現を促進する点眼液(ジクアホソルナトリウム)、ムチンの産生や発現を促進する点眼液(レパミピド)が用いられます。 症状の強い重症のドライアイでは、ステロイド点眼液を併用する場合があります。

  • 人工涙液
  • 涙と同じ濃度の塩分を含んだ点眼薬です。

  • ヒアルロン酸製剤
  • 最も多く使用されているドライアイ治療薬です。乾き過ぎると目の表面が荒れて細かい傷が生じますが、この傷を修復する作用があります。

  • ジクアホソルナトリウム(ジクアス®)
  • 点眼することで水分量を増やす効果と、乾きを防ぐムチンという物質を増やす効果があります。ムチンは涙を目の表面に留める接着剤の役割を果たします。

  • レパミピド(ムコスタ®)
  • この点眼もムチンの産生を促進します。元々胃潰瘍を治療する為の内服薬だったものを点眼薬にしているため、粘膜の炎症を抑える効果もあります。 そのため、炎症を伴うタイプのドライアイにはよく効くことが多いです。防腐剤フリーのためコンタクトレンズ装着中でも点眼できます。副作用として苦味があります。

涙点プラグ

重度なドライアイの方や点眼薬で改善が見られない場合には涙点プラグを検討します。
涙の出口である涙点にプラグ(栓)をすることによって、目の表面に十分な量の涙を溜められるようにする治療です。

IPL治療(マイボーム腺機能不全治療)

IPL(Intense Pulsed Light)による光治療です。
油分を分泌するマイボーム腺に照射しその詰まりを解消することで、マイボーム腺の機能の回復を図ります。 油分が適切に分泌されることで目の表面の潤いを取り戻すことができます。